2025年(令和7年)5月、労働安全衛生法が改正され、これまで「努力義務」とされていた従業員50人未満の事業場でも、ストレスチェックが義務化されることが正式に決まりました。
当初、施行時期は「公布後3年以内に政令で定める日」とされていましたが、2026年6月10日に施行期日を定める政令が公布され、2028年(令和10年)4月1日から全事業場で義務化されることが正式に決定しました。
「まだ先のこと」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、外部委託先の選定や社内体制の整備には相応の時間がかかります。準備は今から始めることが望まれます。
この記事では、社会保険労務士の視点から、法改正の概要・2028年4月施行の最新情報と、50人未満の事業場が具体的に何をすべきかをわかりやすく解説します。

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【この記事で解説していること】
- ストレスチェック制度とは何か
- 2025年5月法改正の内容と施行時期(2028年4月1日施行・正式決定)
- 対象となる事業場・労働者の範囲
- 小規模事業場に推奨される実施体制(外部委託・地さんぽ)
- 今から取り組む準備ステップ
- よくある質問(費用・罰則・派遣社員の扱いなど)
※本記事は2025年5月の改正法公布および2026年6月10日の政令公布(施行日正式決定)に基づいています。
ストレスチェック制度とは?基本と法改正の経緯
制度の目的と概要
ストレスチェック制度とは、労働安全衛生法に基づき、労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を事業者に義務付ける制度です。
重要なのは、この制度の目的が精神疾患の「発見」ではなく、メンタルヘルス不調の「未然防止(一次予防)」にあるという点です。
具体的には、年1回の検査・本人への結果通知・高ストレス者への医師による面接指導・職場環境の改善という一連の取組がセットになっています。単なる「検査」で終わらせず、職場全体のメンタルヘルス向上につなげることが求められます。

【出典参考】マニュアル概要版(スタートガイド)│厚生労働省
これまでのルール:50人以上は「義務」、50人未満は「努力義務」
2015年(平成27年)12月から、従業員50人以上の事業場ではストレスチェックが義務化されていました。
一方、従業員50人未満の事業場は「努力義務」にとどまり、実施率はわずか32.3%にとどまっていました。しかし、小規模事業場でも精神障害による労災認定件数は増加傾向にあり、このままでは対策が追いつかないという背景がありました。
2025年5月:改正労働安全衛生法の公布で義務化が決定
2025年(令和7年)5月14日、改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)が公布されました。これにより、従業員数にかかわらず、すべての事業場でストレスチェックを実施することが正式に義務付けられました。
ただし、この時点では施行日は「公布後3年以内に政令で定める日」とされており、具体的な時期は未定でした。
【出典参考】労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律について(報告)│厚生労働省
なぜ義務化?背景にある課題
厚生労働省のデータによれば、メンタルヘルス不調による病休期間は平均約3か月に及び、復職後に再び病休となる割合は約半数に上ります。
従業員数が少ない事業場ほど、1人の長期離脱が事業全体に与えるダメージは大きいと言えます。ストレスチェックへの取組は、リスク管理であると同時に、生産性向上や人材の定着にもつながる重要な経営施策です。
【2026年6月速報】施行時期が正式決定!!

2028年4月施行が正式決定(2026年6月10日 政令公布)
2026年(令和8年)6月10日、施行期日を定める政令(令和8年政令第195号)が官報で公布され、2028年(令和10年)4月1日から全事業場でストレスチェックが義務化されることが正式に決定しました。
2025年5月の法改正では「公布後3年以内」とだけされていた施行時期が、2026年5月18日の労働政策審議会で「2028年4月1日」と示され、6月10日の政令公布で確定しました。施行日が固まったことで、いよいよ準備に動き出す段階に入ったといえます。
【出典参考】官報 令和8年6月10日(令和8年政令第195号)
【出典参考】周知用リーフレット│厚生労働省
「まだ2年ある」は危険 ― 今から準備が必要な理由
「まだ2年ある」と感じるかもしれませんが、外部委託先の比較・選定、社内規程の整備、担当者への周知には想像以上の時間がかかります。
特に小規模事業場では、ストレスチェックの実施経験がないケースがほとんどです。いきなり本番を迎えるのではなく、今のうちに体制を整え、試行実施まで済ませておくことが理想です。準備を始めるのは「今」がベストのタイミングです。
義務化で何が変わる?対象の範囲を整理
対象事業場:規模を問わず「すべての事業場」
今回の法改正により、日本の全企業の約96%を占める従業員50人未満の事業場もすべて対象となります。
「事業場」とは会社単位ではなく、店舗・工場・営業所など「場所ごと」の単位です。従業員が5人の小さな事業場であっても、義務の対象となる点にご注意ください。
対象労働者:パートやアルバイトはどうなる?
ストレスチェックの対象となる「常時使用する労働者」の要件は、以下のとおりです。
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【常時使用する労働者の要件】
- 契約期間が1年以上(更新見込みを含む)
- 週の所定労働時間が、同種の業務を行う通常の労働者の4分の3以上
※週の労働時間が4分の3未満でも、2分の1以上であれば実施が「望ましい」とされています。
会社の義務と従業員の権利

会社に求められる対応と、従業員に認められる権利は、次のように分けて考えると整理しやすくなります。
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【会社側の義務】
- ストレスチェックの実施
- 高ストレス者への医師による面接指導の実施
- 医師の意見に基づく就業上の措置(労働時間の短縮・配置転換など)
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【従業員側の権利と保護】
- 受検を強制することはできません(受検は本人の任意)
- 個人の結果は、本人の同意なしに会社へ通知されません
- 面接指導を申し出たことや、受検しなかったことを理由とした不利益取扱いは法律で禁止されています
小規模事業場はどう対応すればいい?実施体制のポイント

50人未満には「外部委託」が推奨される理由
従業員50人未満の事業場には、産業医の選任義務がありません。また、少人数ゆえに個人情報が特定されやすく、プライバシーの保護が難しいという課題もあります。
そのため、厚生労働省の実施マニュアルでも、自社実施ではなく「外部委託」が原則として推奨されています。
「地さんぽ(地域産業保健センター)」の無料支援を活用しましょう
全国約350か所に設置されている「地域産業保健センター(通称:地さんぽ)」では、従業員50人未満の事業場を対象に、高ストレス者への医師による面接指導を無料で受けることができます。
ただし、地さんぽではストレスチェックの「検査自体」は実施していません。外部サービスで検査を行い、面接指導は地さんぽに依頼するという組み合わせが、費用を抑えつつ確実に対応できるおすすめの方法です。
厚労省の「小規模事業場向けマニュアル」を活用しましょう
2026年(令和8年)2月、厚生労働省は50人未満の事業場向けに「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表しました。社内規程のモデルも収録されており、初めて実施に取り組む担当者にとって非常に参考になる内容です。
【出典参考】小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(PDF)│厚生労働省
今から準備すべきこと【4ステップ】

準備は大きく4つに分けて考えると、今から取り組むべきことが整理しやすくなります。
① 自社の対象者の範囲を確認する
パートやアルバイトを含め、「常時使用する労働者」の要件を満たす従業員を洗い出します。対象人数を把握することが、費用感や実施規模の見積もりにつながります。
② 実務担当者を決める
外部委託先との連絡調整を担う「実務担当者」を指名します。衛生推進者や安全衛生推進者が担うことが望ましいとされています。
※人事権を持つ経営トップ(社長など)は、実施のとりまとめ役にはなれますが、個人の結果を取り扱う「実施事務従事者」になることはできません。この点はよく誤解されるため、ご注意ください。
③ 外部委託先を比較・選定する
委託先を選ぶ際は、厚生労働省が示している「サービス内容事前説明書」を活用しましょう。料金体系(面接指導がオプションか否かなど)や情報管理体制をしっかり確認することが大切です。
④ 社内規程を整備し、試行実施してみる
いきなり本番を迎えず、まず社内ルール(規程)を整備・周知した上で試行実施することをおすすめします。厚労省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」などを活用することで、スムーズに導入できます。
よくある質問(FAQ)
Q. 従業員が5人しかいませんが、本当に義務の対象ですか?
はい、義務の対象となります。改正法では事業場の規模にかかわらず、すべての事業場が対象です。従業員が1人からでも実施義務が生じます。
Q. 費用はどれくらいかかりますか?
外部サービスに委託する場合、年1回で事業場あたり数万円程度が目安です。
50人未満では、1人あたり料金よりも基本料金・一律料金で決まることが多く、人数で割ると1人あたり年1,000円〜3,000円台程度になるケースがあります。面接指導については、地域産業保健センター(地さんぽ)を無料で活用できる場合があります。
Q. 実施しなかった場合、罰則はありますか?
ここは誤解が多いポイントです。従業員50人以上の事業場では、労働基準監督署への報告義務があり、違反した場合は50万円以下の罰金の対象となります。一方、50人未満の事業場は、労働基準監督署への報告義務はなく、罰則の対象にもなりません。
ただし、「罰則がない=対応しなくてよい」というわけではありません。会社には労働契約法上の「安全配慮義務」があり、これを怠れば民事上の責任を問われることもあります。
むしろストレスチェックは、従業員の不調を未然に防ぎ、会社を守るための取り組みです。罰則の有無にかかわらず、実施しておくことが安心につながります。
Q. 集団分析(職場環境の改善)も義務になりますか?
集団分析と職場環境改善は、事業場の規模にかかわらず「努力義務」のままです。ただし、メンタルヘルス不調の未然防止に最も効果的な取組であるため、積極的な実施が強く推奨されます。
なお、対象グループが10人未満の場合は個人が特定されるリスクがあるため、原則として集団分析の結果提供を受けることはできません。
Q. 派遣社員のストレスチェックは誰が実施しますか?
派遣社員のストレスチェックは、「派遣元」の事業主が実施義務を負います。派遣先の事業場は対象人数のカウントに含めないよう注意が必要です。
まとめ:準備は「今」から。外部の支援を上手に活用しましょう
2025年(令和7年)5月の法改正により、従業員数にかかわらず、すべての事業場でストレスチェックを実施することが義務化されました。さらに2026年5月、厚生労働省が2028年4月施行の方針を明らかにし、2026年6月10日には2028年4月1日からの施行が正式に決定しました。
50人未満の事業場には報告義務がなく、直接的な罰則はありません。しかし、安全配慮義務の観点から対応は必須です。外部委託と地域産業保健センター(地さんぽ)の無料支援を組み合わせることで、費用を抑えながら体制を整えることができます。
施行までは約2年。準備期間があるうちに着手しておくことで、慌てず・コストを抑えて体制づくりができます。
「自社の場合、誰が対象になるのか?」「規程をどう作ればよいかわからない」といったお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。

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栃木県宇都宮市の社労士事務所ミアータでは、「お客様の”迷う時間”を少しでも減らしたい」という想いを持ち、社会保険手続き・就業規則の作成・給与計算・助成金申請など、社会保険や労務管理の課題に幅広く対応しています。
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