公開日: 2025年11月30日
キーワード: 年収の壁、106万円の壁、130万円の壁、150万円の壁、社会保険、週20時間

「年収106万円を超えないように働く時間を調整している」――そんなパート・アルバイトの方は多いのではないでしょうか。
しかし、令和7年(2025年)の最低賃金改定により、この「106万円の壁」は事実上の意味を失い始めています。
最低賃金が全国で1,000円を超えた今、社会保険の加入基準は「年収106万円」から「週20時間」へと、実質的にシフトしています。
さらに2025年は、19歳〜22歳の若年層に対して「150万円の壁」という新たな基準が導入されるなど、年収の壁をめぐる制度が大きく変わる転換期となっています。
この記事では、パート・アルバイトで働く方、そして従業員を雇用する企業の双方が知っておくべき「年収の壁」の全体像と、その対応策を社会保険労務士の視点から解説します。
【この記事で解説している内容】
- 2025年時点の「年収の壁」の全体像(103万円・106万円・130万円・150万円など)
- 「106万円の壁」が崩れる理由を計算式で理解
- 新たに重要になる「週20時間の壁」と「130万円の壁」とは
- 19歳〜22歳に新設された「150万円の壁」の詳細
- 手取り減少を防ぐ政府の支援策(社会保険適用促進手当など)
※本記事は2025年11月時点の法改正議論や提案に基づいた内容を含みます。
実際の制度変更は、今後の国会審議等により変更となる可能性があります。
1. 【2025年最新】年収の壁を完全整理
「年収の壁」とは何か
「年収の壁」とは、パート・アルバイトなどで働く方の年収が一定額を超えた場合、税金や社会保険の負担が発生したり、家族の扶養から外れたりする基準のことです(その結果、手取りが減ることになります)。
2025年は税制改正や社会保険制度の見直しにより、これらの「壁」が大きく変わる年となっています。
【 主な年収の壁一覧/2025年10月時点】
以下の表で、現在の主な年収の壁を整理しました。
背景に色が付いている箇所が、社会保険における年収の壁になります。
| 税金の壁 | 社会保険の壁 | 内容 |
|---|---|---|
| - | ※2025年10月から、123万円に引き上げ | |
| - | 106万円 | 従業員数51人以上の会社で、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入義務が発生する ※2026年10月に撤廃予定 |
| 110万円 | - | 住民税の支払いが発生 (金額は自治体により変わる可能性あり) |
| 123万円 | - | 家族(親)が扶養控除を受けられる上限額 |
| - | 130万円 | 家族(親)の扶養(社会保険)から外れ、国民健康保険などへの加入義務が発生(19歳〜22歳は除く) |
| 150万円 | - | 19歳〜22歳の家族(親)が扶養控除を満額受けられる上限額 |
| - | 150万円 | 【2025年10月新設】19歳〜22歳が家族の社会保険の扶養に入れる上限 ※本来の130万円→150万円に上限UP! |
| 160万円 | - | 本人に所得税の支払いが発生する |
| 160万円 | - | 家族が配偶者特別控除を満額で受けることのできる上限額 |
| 188万円 | - | 19歳〜22歳の家族(親)の扶養控除が0(ゼロ)になる |
| 201万円 | - | 配偶者特別控除の対象外となる |
特に注目すべき3つの変化
変化①:106万円の壁が実質的に意味を失う(2025年10月の最低賃金改定)
最低賃金1,000円超えにより、働く時間数が週20時間になると自動的に106万円を超える状況に。
変化②:106万円の壁が2026年10月に撤廃予定
政府は2026年10月に「106万円の壁」そのものを撤廃する方向で検討を進めています。
変化③:19歳〜22歳向け「150万円の壁」が新設(2025年10月1日から)
大学生などの若年層に対して、社会保険の扶養に入れる上限が130万円から150万円に引き上げられました。
2. 「106万円の壁」とは何か?
社会保険加入の5つの要件
「106万円の壁」とは、パート・アルバイトの方が社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入する基準の一つです。
従業員数51人以上の企業などで働く場合、以下の5つの要件を全て満たすと、社会保険への加入義務が生じます。
【社会保険加入の5要件】
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が88,000円以上(年収…約106万円)
- 雇用期間が2ヶ月を超える見込みあり
- 学生でないこと
- 従業員数が51人以上の企業等で働いていること
この中の「②月額賃金88,000円以上」という基準が、いわゆる「106万円の壁」と呼ばれてきました。
(88,000円×12ヶ月≒1,060,000円)
これまでの働き方の調整
多くのパート・アルバイトの方が、この106万円を超えないように勤務時間を調整してきました。
【その理由】
- 配偶者の扶養に入っていられる
- 自分で社会保険に加入すると、保険料が天引きされ手取りが減る
といった点にあります。
しかし、最低賃金の大幅引き上げにより、この状況は大きく変わろうとしています。
3. なぜ「106万円の壁」は事実上崩壊するのか
最低賃金1,000円超えがもたらす変化
令和7年度の最低賃金改定により、全国すべての都道府県で最低賃金が1,000円を超えました。
この変化により、週20時間働けば、ほぼ自動的に月額88,000円を超える時代になったのです。

【参考出典】令和7年度最低賃金全国一覧
具体的な計算例で確認
最低賃金が最も低い地域(1,023円)で計算してみましょう。
計算式:
時給1,023円 × 週20時間 × 4.3週/月 ≒ 月額87,978円
【根拠】
365日÷7日=53.14週(年間の週数)
53.14週÷12か月=4.345週(1か月の週数)
これにより1か月の週数を4.3として計算
計算の結果は月額87,978円となり、88,000円にわずか22円届きません。
しかし、実際には
- 残業が1時間でもあれば即座に88,000円を超える
- 時給が1,025円以上の地域(ほぼ全国)では確実に超える
- 実労働時間が週20時間からわずか30分(0.5時間)増えるだけでも、1,023円 × 0.5時間 = 約512円の増加となり、月換算ではこの増加分が加算され、月額88,000円を超える計算になります。
つまり、週20時間勤務であれば、ほぼ確実に月額88,000円を超える状況になったのです。
「106万円」という数字の意味が薄れた
これまでは「年収を106万円以下に抑えれば社会保険に入らなくて済む」という認識がありました。
しかし、最低賃金1,000円超えの時代では、「週20時間以上働くかどうか」が実質的な分岐点となります。
年収で調整しようとしても、時給が上がれば自動的に年収も上がってしまうため、コントロールが難しくなったのです。
「106万円の壁」は撤廃が決まっている
上記のように、「106万円の壁」は実質的に意味を失いつつあるという理由もあり、撤廃されることが決まっています。
今の最低賃金の上昇幅が続く場合、早ければ2026年10月には撤廃されるかもしれません。
4. 新たに意識すべき「週20時間の壁」と「130万円の壁」
これから重要になる2つの壁
最低賃金1,000円超えの時代、パート・アルバイトの方が意識すべき「壁」は以下の2つ。
「週20時間の壁」と「130万円の壁」です。
① 週20時間の壁(社会保険の加入基準)
-
【対象者】
従業員数51人以上の企業等で働く方
【基準】週の所定労働時間が20時間以上
【影響】- 社会保険(厚生年金・健康保険)への加入義務
- 保険料の半分は会社負担、半分は本人負担(給与から天引き)
- 国民年金から厚生年金への切り替え
② 130万円の壁(扶養の基準)
-
【対象者】
全ての働く方(19歳〜22歳を除く)
【基準】年収が130万円以上
【影響】- 配偶者や親の扶養から外れる
- 自分で国民健康保険・国民年金に加入する必要がある
2つの壁の違いを図解
| 項目 | 週20時間の壁 | 130万円の壁 |
|---|---|---|
| 適用対象 | 従業員51人以上の企業等 | すべての企業 |
| 判断基準 | 週の所定労働時間 | 年収の見込み額 |
| 加入する保険 | 厚生年金・健康保険(勤務先) | 国民年金・国民健康保険 |
| 保険料負担 | 会社と本人で折半 | 全額自己負担 |
| 配偶者の扶養 | 外れる | 外れる |
実務上の注意点:「2ヶ月連続」ルール
週20時間の判断は、契約上の所定労働時間が基本です。
しかし、実際の労働時間が2ヶ月連続で週20時間を超え、今後も超える見込みである場合も、社会保険の加入対象となります。
例えば:
- 契約は週18時間
- しかし実際は毎週22時間勤務が2ヶ月続いた
- 今後も同様の勤務が見込まれる
→ この場合、社会保険加入の対象となります
(週の所定労働時間が20時間以上、雇用期間が2ヶ月を超える見込みあり、という条件に該当することになるため)
【出典参考】社会保険適用拡大・特設サイト|厚生労働省
106万円の壁と130万円の壁に含まれる報酬はどれ?交通費(通勤手当)は?
106万円の壁と130万円の壁とでは、対象となる報酬の範囲が異なります。
106万円の壁では「基本給・各種手当」を使い、130万円の壁では、健康保険法の「標準報酬月額」を使います。
この違いをしっかり押さえておきましょう。
(〇が対象、×は対象外)
| 種類 | 106万円の壁 | 130万円の壁 |
|---|---|---|
| 基本給 | 〇 | 〇 |
| 諸手当 (皆勤手当・職務手当など) | 〇 | 〇 |
| 通勤手当 | × | 〇 |
| 家族手当 | × | 〇 |
| 時間外手当・休日手当 (残業代と言われるもの) | × | 〇 |
| 賞与(ボーナス) | × | 〇 |
「130万円の壁」の一時的な収入増への対応
政府の「年収の壁・支援強化パッケージ」により、繁忙期などで一時的に年収が130万円を超えた場合でも、事業主が「一時的な収入増である」ことを証明すれば、引き続き扶養に入り続けることが可能になりました。
これにより、短期的な繁忙期対応で扶養から外れるリスクが軽減されています。
ただし、以下の注意点があります。
【注意点】
- 連続して2年まで(原則)
- 必ず認められるとは限らない

【出典参考】
「年収の壁」対策がスタート!パートやアルバイトはどうなる?
事業主の証明による被扶養者認定Q&A
年収の壁・支援強化パッケージ
5. 【注目】19歳〜22歳向け「150万円の壁」が新設
2025年10月1日から適用開始
2025年10月1日から、19歳以上23歳未満の方(19歳~22歳)について、社会保険の扶養に入れる年収基準が従来の130万円から150万円に引き上げられました。
これは、大学生などの若年層がアルバイトで働きやすくする環境を整備するための制度改正です。
対象となる方
年齢要件: その年の12月31日時点で19歳以上23歳未満の方
具体例:
- 2025年の途中で19歳になった場合でも、12月31日時点で19歳なら、2025年1月からの年収が150万円基準で判定されます
- 大学1年生(18歳)の場合、12月31日時点で19歳になっていれば対象
学生アルバイトへの影響
年収150万円までは親の扶養に入っていられる
✔ 従来(2024年まで) 年収130万円を超えると親の社会保険の扶養から外れる
✔ 2025年10月以降 年収150万円を超えると親の社会保険の扶養から外れる(19〜22歳)
条件: 2025年10月1日以降に扶養認定を受ける場合に適用
注意点: 扶養認定日が2025年10月1日より前の場合は、従来通り130万円が基準
扶養から外れる年収額の上限「130万円の壁」「150万円の壁」
| 項目 | パートの配偶者など(原則) | 19歳〜22歳 |
|---|---|---|
| 社会保険の扶養に入れる上限額 | 130万円まで | 150万円まで |
19歳〜22歳の学生は、パート配偶者などよりも多く働ける環境が整備されたと言えるでしょう。
6. 今すぐできる実務対応チェックリスト
今回の改定に対応するため、経営者と人事担当者が今すぐ取り組むべきチェックリストをまとめました。
【企業向け実務対応チェックリスト】
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| ①社会保険加入者の見直し | 週20時間以上勤務する従業員をリストアップする |
| ② 手当の定義確認 | 106万円の壁、130万円の壁に、「含まれる手当」と「含まれない手当」を区別する |
| ③ 雇用契約の更新 | 勤務時間・給与体系の変更がある場合は必ず契約書を更新 |
| ④ 従業員への説明 | 社会保険加入のメリットと手取り減少への対応策を説明 |
①社会保険加入者の見直し
契約上の所定労働時間が週20時間以上の従業員に加えて、実労働時間が恒常的に20時間を超えている従業員にも注意が必要です。
実務上は「2ヶ月連続で週20時間を超え、今後も超える見込みである場合は、社会保険の加入対象」となります。
②手当の定義確認
先ほどもご説明しましたが、106万円の壁・130万円の壁に「含まれる手当」と「含まれない手当」を、しっかりと把握しておきましょう。
③雇用契約の更新
従業員の労働時間や賃金体系に変更が生じる場合は、必ず雇用契約書を更新し、改めて書面で交付してください。
④従業員への説明
新たに社会保険の対象となる従業員には、個別に面談の機会を設けることをおすすめします。
その際、社会保険加入に関し、「将来の年金受給額の増加、より手厚い医療保障、保険料の半額を会社が負担する」などのメリットをしっかりと説明することが重要です。
【伝える際のポイント】
× 避けるべき説明
「法律で決まっているから加入してもらいます」
「みんな入っているから大丈夫です」
○ 推奨される説明
「短期的には手取りが減りますが、将来の年金は〇〇万円増えます」
「病気で働けなくなったときの保障もあります」
「会社も保険料を半分負担します」
手取り額の減少という現実も認めつつ、「労働時間を増やして収入を上げる選択肢」や「次のセクションで解説する政府の支援策」について具体的に話し合いましょう。
国が提供している、年金額を計算できるツールもあります。
公的年金シミュレーター/厚生労働省
7. 手取り減少を防ぐ政府の支援
政府は、社会保険加入による手取り減少を緩和するため、企業向けの支援策を用意しています。
それが、「年収の壁・支援強化パッケージ」です。
【主な内容】
- 社会保険適用促進手当
- キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」
- 130万円の壁:一時的な収入増への柔軟な対応
支援策①:社会保険適用促進手当
制度の概要:
新たに社会保険に加入した従業員に対し、手取りが減らないように手当を支給した場合、その手当は、本人が負担する保険料額を上限として、社会保険料の算定対象外となります。
具体的には、社会保険に加入すると保険料の負担により手取り額が減少しますが、会社からの手当でその減少分を補うイメージです。この手当は社会保険料の計算対象外となります。
【メリット】
- 手当を支給しても従業員の保険料は上がらない
- 手取り額の急激な減少を防げる
- 会社の社会保険料負担も抑えられる

【出典参考】
年収の壁・支援強化パッケージ
支援策②:キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)
制度の概要:
パート・アルバイト従業員の社会保険加入に伴い、賃上げや労働時間延長に取り組む企業を支援する助成金です。
(1) 手当等支給メニュー
- 対象:手当などの支給や賃上げをして収入を増やす取組を行う場合
※支援策①として説明した「社会保険適用促進手当」も対象となります(1年目、2年目のみ)
(2)労働時間延長メニュー
- 対象:所定労働時間を延長して収入を増やす取り組みを行う場合

【出典参考】
キャリアアップ助成金 (社会保険適用時処遇改善コース)
支援策③:130万円の壁への一時的な収入増への柔軟な対応
前述の「130万円の壁」で解説した、一時的な収入増加に対する措置となります。
認定されれば、連続して2年まで適用を受けられます。
8. まとめ:年収の壁を乗り越える労務管理へ
「106万円の壁」から「週20時間の壁」へ
最低賃金の全国1,000円超えにより、「年収106万円」という基準は実質的な意味を失いました。
これからは「週20時間以上働くかどうか」が、社会保険加入の実質的な分かれ目となります。
2025年は年収の壁の大転換期
【社会保険での主な変化】
- 106万円の壁の実質的崩壊(最低賃金改定)
- 2026年の106万円の壁撤廃予定
- 19歳〜22歳向け150万円の壁の新設
企業も従業員も、この変化を正しく理解し、適切に対応することが求められています。
特に19歳〜22歳の若年層に注目
2025年10月から、大学生などの若年層は年収150万円まで扶養に入り続けることが可能になりました。
これにより、学生アルバイトの労働力を活用しやすくなり、企業の人手不足対策にもつながります。
企業に求められる3つの対応
① 正確な情報提供
年収の壁の全体像と社会保険加入のメリットを把握し、従業員に分かりやすく説明する
② 個別の相談対応
従業員一人ひとりの状況(年齢、家族構成、働き方の希望)に応じた選択肢を提示する
③ 支援策の積極活用
社会保険適用促進手当やキャリアアップ助成金を活用し、手取り減少を緩和する
変化をチャンスに変える
「年収の壁」の実質的な崩壊は、確かに企業と従業員双方に戸惑いをもたらします。
しかし、これは同時に「将来の安心を一緒に作る」という前向きなコミュニケーションの機会でもあります。
また、19歳〜22歳向けの150万円の壁の新設は、若年層の労働参加を促進し、企業の人材確保にもプラスに働く可能性もあります。
短期的なコストではなく、長期的な人材定着と組織の安定化への投資として、この変化を捉えていきましょう。
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